【目的】無線技術において次第に利用が進んできたミリ波(MMW)放射に対する皮膚細胞の潜在的反応を調べること。 【方法】平均入射電力密度1.8mW/cm2、平均の比吸収率42.4 W/kg の60.4 GHz に、ヒトの皮膚の初代培養細胞を1、6、24時間ばく露した。これらのばく露が遺伝子発現に影響するか否かを明らかにするために大規模分析を実施した。41000個のユニークなヒトの転写物プローブセットを入れた遺伝子発現マイクロアレイを用い、真のばく露と擬似ばく露について得られたデータを比較した。 【結果】遺伝子発現値についてBenjamini-Hochberg法のような厳密な統計的分析を行った場合、遺伝子発現における有意な差異は観察されなかった。しかし、マイクロアレイデータの分析にt検定を採用した場合、130個の転写物がばく露後に変化した可能性が見出された。定量的に分析するために、これらの転写物から変化の倍率が高く、かつP値が低いというベストな組み合わせをもつ24個の遺伝子を予め選択して、実時間PCRを実施した。これの内の5個(CRIP2、PLXND1、PTX3、SERPINF1、TRPV2)は6時間ばく露後に他とは違う発現をしたことが確認された。 【結論】我々が知る限り、これはMMW放射に関連した遺伝子発現変化の可能性を報告した初めての大規模研究である。
|